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親の預金が減っている?使途不明金の疑惑を調べる法的手段

  • 執筆者の写真: 家頭 恵
    家頭 恵
  • 8月1日
  • 読了時間: 4分

 「久しぶりに実家の通帳を見たら、残高が思っていたよりずっと少なかった」  「親と同居する兄弟が管理しているが、何に使ったのか聞いても答えてくれない」

 親の生前または死後に、口座から使途不明のお金が引き出されているケースは、相続トラブルのなかでも特に感情的な対立を招きやすい問題です。

 しかし「使い込んだだろう」と証拠もなく問い詰めても、相手が否定したり、通帳や領収書などの資料を隠したり処分したりするおそれがあります。問題を解決するためには、感情ではなく、客観的な証拠に基づいて事実を確認することが重要です。

 今回は、使途不明金の調査方法と、不当に引き出された預金を取り戻すための法的手段について解説します。

 使途不明金とは、預金が減っているものの、その使いみちがわからないお金のことです。たとえば、認知症が進行していた時期や入院中に多額の現金が引き出されていた、亡くなる直前に数百万円単位の出金が続いていた、といったケースが典型です。

 ただし、介護費用や施設入所費など正当な支出の可能性もあるため、まずは「本当に不自然な出金か」を客観的な資料で確認することが出発点になります。

 調査は「いつ・いくら・どのような方法で引き出されたか」を特定することから始まります。有効な手段が、金融機関への「取引履歴の開示請求」です。

 親が亡くなっている場合、相続人であれば他の相続人の同意がなくても単独で開示請求ができます(戸籍謄本や本人確認書類が必要です)。

 親が存命の場合は、親本人が請求するのが原則です。判断能力があるなら一緒に開示請求を行い、認知症などで低下している場合は、家庭裁判所に成年後見等の申立てを行い、選任された後見人が財産調査として取得します。  取引履歴を入手したら、引き出しの日時・金額・場所を一覧化しましょう。あわせて医療・介護記録を取り寄せ、引き出し時点で親自身が銀行に行ける状態だったか、判断能力はどの程度あったかを確認しておくと、後の交渉や裁判で重要な証拠となります。


  調査の結果、権限なく預金が引き出されていたことが判明した場合は、「不当利得返還請求」(民法第703条・第704条)により返還を求めることが考えられます。親の死後は、この返還請求権を相続人が引き継ぎます。

 注意したいのが時効です。不当利得返還請求権は、権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年で時効となります(不法行為に基づく請求は、損害と加害者を知った時から3年)。疑いがあっても放置すると、請求できなくなるおそれがあります。

 また、2019年(令和元年)施行の改正相続法では、相続開始後・遺産分割前に相続人が預金を無断で引き出した場合、他の相続人全員の同意があれば、その金額を遺産分割の対象に含められる制度(民法第906条の2)が設けられました。引き出しが相続開始前か後かによって利用できる制度が異なるため、時系列の整理が重要です。


  実際の紛争では、「親に頼まれた」「生活費や入院費に使った」「親から贈与された」といった反論がよくあります。

 こうした主張に対しては、取引履歴や医療記録、生活状況などの客観的な資料が重要になります。引き出しの金額や時期を支出内容と照らし合わせることで、その説明に合理性があるかを検証できます。

 生活費を大きく超える出金が続いている場合は、具体的な使途や領収書などの裏付け資料の提出を求めることになります。贈与の主張についても、贈与契約書の有無や当時の親の判断能力などが重要な判断材料になります。

 なお、生前の使い込みをめぐる争いは、原則として家庭裁判所の遺産分割調停では解決できず、別途、地方裁判所での民事訴訟(不当利得返還請求訴訟など)が必要となる点にも留意が必要です。


 使途不明金の問題は感情的になりやすいですが、取引履歴という客観的な記録は必ず残っています。まずは冷静に証拠を集めて事実を確定させ、法的に請求できる範囲を見極めて交渉や訴訟に臨むことが、最も確実で早い解決への道筋です。

 「確証がない」「どこまで調べられるかわからない」という段階でも問題ありません。時効もありますので、不審な点に気づいたら早めに弁護士へご相談ください。


参考Webページ:

・e-Gov 法令検索「民法」より 第703条「不当利得の返還義務」、第704条「悪意の受益者の返還義務等」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_4-At_703

・e-Gov 法令検索「民法」より 第906条の2「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089?utm_source=chatgpt.com#Mp-Pa_5-Ch_3-Se_3-At_906_2

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