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  • 執筆者の写真家頭 恵

破産手続での同時廃止と管財手続とは?


破産手続には「同時廃止」と「管財手続」の2種類があります。法律上の原則としては、管財手続なのですが、個人破産の場合には例外的に「同時廃止手続」が認められています。例外といっても原則と例外は逆転しており、個人破産の多くは「同時廃止」です。


一方、法人の破産手続きに同時廃止は認められておらず、すべて管財人が就任します。統計データはあまり見つかりませんでしたが、Webで調べた限りでは、70%くらいが同時廃止になるようです。


同時廃止は、管財手続と比較して手続きが簡易で、申立人にとっての手間が減ります。具体的には、裁判所へ面接に行くことなく手続きができ、費用も安価になります。


同時廃止と管財手続の手続のどちらになるかは、裁判所の判断になります。


それでは、それはどういう判断基準に基づいているのでしょうか。


法律上は、かなり曖昧です。裁判所もこの点が曖昧であることは隠しておらず、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、現在では管財手続を減らしているという実情もあるようです。しかしもちろん、裁判所の「感覚」ですべてが決まるわけではありません。いくつかの判断基準を用意しています。



(1)保有財産の基準

主には、保有している財産が基準となります。千葉県の場合は、33万円を超える現金をもつ場合、または、所有する財産のうち1件で20万円を超える場合には、管財手続となります。


また、現在保有している財産だけではなく「回収できるような資産があるかどうか」ということも、要素になります。


たとえば、


・知人に50万円を貸している

・過払い金がある


など、回収できる可能性があれば、管財事件として、裁判所が回収するため管財手続とする場合があります。


(2)個人事業を行っていた場合

個人事業を行っていた場合には管財手続になる可能性が高くなります。個人事業主である場合には、会社員とは異なり出金や入金のルートが複雑で、什器備品、事業所の処理がきちんとなされているかどうか等が問題になりえるからです。


(3)免責不許可事由* がある場合

免責不許可事由の存在が確実な場合、または強く推認される場合には、管財手続とされることが多いです。この場合、管財人の方で免責不許可事由を調査し、免責するか・しないかの意見を出します。「免責しない」となれば、破産したにもかかわらず借金を払わなければなりません。


とは言っても、管財人の指導にきちんと従えば、免責されることが一般的です。また、調査というと取調べが想像されますが、通常はそこまで細かくは行われません。破産者本人との面談で免責不許可事由の具体的内容を特定し、反省文の提出と家計の見直しをさせるぐらいで、そこまで警戒するものではありません。免責のお墨付きを管財人が与えてくれるという意味では、破産する人に有利になる部分もあります。


* 「免責不許可事由」とは、例えば借金の原因が全額投資であるとか、財産を隠しているような場合等、例外的に、自己破産手続きを行っても借金の返済義務が免除されない場合について、法律上定められているもののことです(破産法252条1項各号)。



いずれにせよ、同時廃止で安価に済ませようと思ったのに、上記の判断基準にひっかかってしまい管財手続になってしまうケースがよくあります。


申立をする前に、上記の事項をきちんと調査し、裁判所に対しては同時廃止にできるようきちんと説明することが大切になります。管財手続の中でも、少額管財と通常の管財と2種類がありますが、それについてはまた別の機会で解説したいと思います。



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