おひとりさまの遺産はどこへー相続人不在時代の備え方
- 家頭 恵

- 8月7日
- 読了時間: 5分
「自分が亡くなった後、財産はどうなるのだろう。」
少子高齢化や未婚率の上昇により、単身で生活する「おひとりさま」が増えています。
相続人がいない場合、遺産は一定の手続を経たうえで、最終的には国庫、つまり国のものになります。しかし、「相続人がいない=必ず国に渡る」というわけではありません。
生前に準備をしておけば、お世話になった人や応援したい団体へ財産を遺したり、亡くなった後の手続きを託したりすることも可能です。
今回は、「おひとりさま」が知っておきたい相続のルールと、元気なうちにできる備えについて解説します。
法律上の相続人となるのは、配偶者のほか、子(およびその代襲相続人である孫など)、直系尊属(父母・祖父母)、兄弟姉妹(およびその子である甥・姪)です。配偶者も子もいなくても、ご両親や兄弟姉妹、甥・姪がご存命であれば、その方々が相続人になります。
これらの相続人が誰もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合には、利害関係人(債権者や特別縁故者など)や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。清算人には、多くの場合弁護士が就任し、財産の調査・管理や債権者への支払いなどの清算を行います。あわせて相続人を捜す公告が行われ、一定期間内に相続人が現れなければ、相続人の不存在が確定します。
なお、清算人選任の申立てには予納金が必要になることがあり、数十万円から100万円程度を求められるケースが一般的です。
相続人がいない場合でも、一定の人は「特別縁故者」として財産を受け取れる可能性があります。
特別縁故者とは、亡くなった方と特別な関係があった人をいい、例えば以下のような方が該当する可能性があります。
・長年生活を共にした内縁の配偶者
・療養看護に努めた親族以外の人
・生前に特別な関係があった人
ただし、特別縁故者として認められるかどうかは家庭裁判所が判断します。「親しかった」というだけで必ず認められるわけではなく、関係性を示す資料なども必要になります。また、申立てをしなければ財産を受け取ることはできません。
大切な人に財産を遺したい場合は、亡くなった後の手続に期待するのではなく、生前に準備しておくことが重要です。
相続人がいない方にとって、最も基本的な備えが遺言書の作成です。

遺言によって、お世話になった友人や知人、NPO法人・学校・自治体などの団体に財産を遺すこと(遺贈)ができます。近年では、公益団体に寄付する「遺贈寄付」への関心も高まっています。
遺言書には、主に二つの方式があります。
自筆証書遺言は、全文(財産目録を除く)を自書して作成するもので、費用はかかりませんが、方式不備で無効になるリスクや紛失・改ざんのおそれがあります。法務局の保管制度を利用すれば、紛失リスクを避けられ、家庭裁判所での検認も不要になります。
公正証書遺言は、公証人が作成する確実性の高い方法です。手数料は財産額に応じて決まり、財産数千万円程度なら証人費用等も含めて5万円から10万円前後が目安です。専門家に文案作成から依頼する場合は、別途10万円から20万円程度かかることが多いでしょう。
相続人がいない方は、遺言の内容を実現する「遺言執行者」を遺言のなかで指定しておくことが特に重要です。弁護士等の専門家を指定しておけば、遺贈や寄付の手続まで確実に実行してもらえます。
遺言書は主に「財産の処分」について効力を持ちますが、葬儀の手配、納骨、賃貸住宅の解約、電気・ガス等の契約の清算、デジタル遺品の削除といった「死後の事務手続き」はカバーできません。
家族がいれば当然のように担ってくれるこれらの事務を、生前に第三者(弁護士、司法書士、信頼できる知人など)に委託しておくのが「死後事務委任契約」です。
公正証書で作成するのが一般的で、公証役場の手数料は1万円台から、専門家に依頼する場合の契約書作成費用は10〜30万円程度が目安です。加えて、事務処理の報酬や実費に充てるため、50〜100万円程度を預託する方式がよく用いられます。
葬儀やお墓についての希望も、この契約のなかで具体的に定めておくことで、自分らしい最期のかたちを実現できます。
老後への備えでは、亡くなった後だけでなく、判断能力が低下した場合への準備も重要です。認知症などにより判断能力が低下すると、預貯金の管理や不動産の売却が難しくなることがあります。
任意後見契約は、元気なうちに、将来支援してくれる人や支援内容をあらかじめ決めておく制度です。
判断能力が低下した後は、家庭裁判所が選任する任意後見監督人のもとで、任意後見人が財産管理などを行います。任意後見契約は公正証書で作成する必要があり、公証人手数料は1万円台程度です。
また、見守り契約や財産管理委任契約と組み合わせることで、判断能力が低下する前から継続的な支援体制を整えることもできます。
「まだ50代・60代だから早い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、遺言書や各種契約は、判断能力が十分にあるうちでなければ作成できません。
突然の病気や認知症によって意思表示が難しくなる前に、少しずつ準備を始めることが大切です。
まずは、以下の点を確認してみましょう。
・預貯金、不動産、保険などの財産を整理する
・誰に、どのような財産を遺したいか考える
・亡くなった後の手続きを任せたい人を考える
おひとりさまの老後や相続への備えは、将来の安心につながります。
「自分の場合、財産はどうなるのか」「どの制度を利用すればよいのか」と不安を感じた場合には、相続や成年後見に詳しい弁護士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。




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