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介護の苦労は報われる?相続対立を防ぐ4つの準備

  • 執筆者の写真: 家頭 恵
    家頭 恵
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分


 「私だけが何年も親の介護をしてきたのに、相続は兄弟と同じなのか」


 こうした不満から、相続をきっかけに兄弟間で深刻な対立に発展するケースは少なくありません。


 民法には、介護などで特別の貢献をした相続人の取り分を増やす「寄与分」や、相続人ではない親族を救済する「特別寄与料」制度があります。もっとも、これらが実際に認められるハードルは高く、思うように評価されないケースも多いのが実情です。


 今回は、寄与分・特別寄与料が認められる条件と、生前からできる相続トラブル対策について解説します。

 寄与分とは、相続人のうち、被相続人(亡くなった親など)の財産の維持または増加に「特別の貢献」をした者について、その貢献分を相続分に上乗せできる制度です(民法904条の2)。民法では、たとえば次のようなケースが想定されています。


  • 被相続人の事業を長年無償で手伝った

  • 生活費を援助して財産の維持に貢献した

  • 長期間にわたり献身的な介護を行った


 制度の趣旨は「公平の実現」ですが、実務上は、この寄与分を認めてもらうこと自体が容易ではありません。

 特別寄与料は「相続人以外の親族」が、介護などの貢献に応じて相続人全員に対して金銭を請求できる制度です。具体的には、以下のような方が対象となります。

  • 長男、次男などの妻(義父母の介護をした、いわゆる嫁)

  • 被相続人の兄弟姉妹(相続順位外となる場合)

  • 被相続人の甥・姪

 特に注意が必要なのは、特別寄与料には厳格な請求期限*が定められており、この期限を過ぎると請求権は消滅します(民法1050条2項ただし書)。

 介護を長年担ってきた方が、相続発生後に「そんな制度があったのか」と気づいた時にはすでに期限切れ…というケースも少なくありません。そのため、相続が発生したら、速やかに専門家へ相談することが不可欠です。


*特別寄与料の請求期限:相続の開始および相続人であることを知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内のいずれか早い方。


 もっとも、寄与分として認められるのは、単なる親孝行ではなく「特別の貢献」に限られます。親族には一定の扶養義務があるため、日常的な世話だけでは足りません。

 具体的には、以下のような要素が重視される傾向にあります。

  • 親が常時介護を必要とする状態だったこと

  • 介護の内容や期間が、専門職に依頼すれば相当な費用を要する程度だったこと

  • その介護によって親の財産維持に貢献したこと

 また、親から生活費の援助を受けていた場合や、生前に対価を受け取っていた場合には、寄与分が否定または減額されることがあります。


 実際に寄与分が認められた事例として、被相続人が認知症を患った以降の約3年間、同居していた相続人が、朝昼晩の食事の世話、排泄の対応、外出の付き添いなどをほぼ一人で献身的に行ったケースがあります。


 裁判所は、親族による介護であることを踏まえつつも、その介護内容や負担の大きさを評価し、結果として876万円の寄与分を認めました。

 この事例から、寄与分が認められやすい要素を整理すると、以下の通りです。

  • 要介護認定を受けており、介護の必要性が客観的資料で裏付けられている

  • 介護のために離職または転職していた事実がある

  • 専門職を代替するほどの具体的な介護内容(入浴・排泄介助、通院付き添いなど)

  • 介護の客観的な記録(日誌・写真・領収書など)が残されている 逆に認められにくいのは、以下のような場合です。

  • 週末だけの通い介護

  • 日常的な買い物や電話連絡のみ

  • 証拠が何もない状態での事後的な主張

 親への日常的な世話が長期間に渡っていたとしても、その内容によっては、扶養義務の範囲内であるとして、寄与分が否定された審判例も存在します(静岡家庭裁判所沼津支部平成21年3月27日審判)。


 法律上の手続き(調停や審判)は長期化しやすく、費用もかかり、何より兄弟間の感情的な対立を決定的なものにしてしまいます。さらに、裁判所が認める金額は、実際の苦労に対して納得感を得られる水準に届かないことも少なくありません。

 「法的手段は最後の手段」と捉え、できれば生前から対策を講じておくことが、家族の関係の破綻を防ぐ最善策です。

(1)生前贈与の活用

 親が元気なうちに、介護を担っている子へ生前贈与を行うことで、介護への配慮を反映させることができます。もっとも、一定期間内の贈与は相続財産に持ち戻される場合があるため、早めの対策が重要です。暦年贈与や相続時精算課税制度など、財産状況に応じた方法を税理士と連携して検討しましょう。


(2)遺言書の作成

 公正証書遺言で、介護を担った子や親族に多く財産を残す意思を明示しておくことは有効です。また「介護への感謝」などを付言事項として記しておくことで、他の相続人の感情的な反発を和らげる効果も期待できます。


(3)生命保険の活用

 死亡保険金は、原則として受取人固有の財産となるため、介護を担った人へ実質的に財産を多く残す方法として活用できます。ただし、金額によっては著しい不公平として調整対象となる可能性があります。


(4)家族会議と記録の蓄積

 生前に家族間で介護の役割分担や相続上の配慮について話し合い、書面化しておくと、後の紛争予防に役立ちます。また、介護日誌や領収書、医療記録などを保存しておくことは、寄与分や特別寄与料を主張する際の重要な証拠となります。


 相続では、財産額そのものよりも、「自分の苦労を認めてもらえなかった」という感情が対立を深刻化させることがあります。

 寄与分や特別寄与料の制度はありますが、認められるための要件は厳格であり、事後的な法的主張だけでは十分に解決できないケースも少なくありません。

 大切なのは、親が元気なうちから、遺言・生前贈与・生命保険などを活用して準備を進め、家族間で話し合っておくことです。将来の相続トラブルを防ぐためにも、不安や疑問がある場合は、早めに専門家へ相談することをお勧めします。




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