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子どものGPSは違法?親権とプライバシー権の法的境界線

  • 執筆者の写真: 家頭 恵
    家頭 恵
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分


 共働き世帯の増加や習い事の多様化に伴い、子どもにGPS端末を持たせているご家庭は、いまや珍しくありません。キッズ向けGPS端末の市場も年々拡大しています。


 その一方で、「これは子どものプライバシーを侵害していないだろうか」「いつまで位置情報を把握してよいのだろうか」と、不安を覚える保護者の方もいるのではないでしょうか。


 今回は、親が子どもにGPSを持たせる行為が法律上どのように評価されるのか、そして見守りが、「行き過ぎた監視」にならないための法的な境界線について解説します。

 まず結論から言えば、親権者が未成年の子どもに対してGPS端末を利用して位置情報を把握することは、一般的には適法です。その根拠は、民法に定められた「親権の概念」にあります。

 民法では「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う(第820条)」と定めています。つまり親には、子どもを安全に育てる権利と義務の両方が課されています。 以下のような行為は、典型的な監護行為の一環です。


・通学状況を確認する

・帰宅時間を把握する

・危険な場所への立ち入りを防ぐ

・緊急時に居場所を確認する  ただし法的に許容されることと、何をしてもよいこととは、まったく別の話です。

  GPS利用の法的評価を考えるうえで、見落とされがちなのが、子ども自身の「プライバシー権」です。

 憲法では、すべての国民に「個人の尊重」と「幸福追求権」を保障しており(第13条)、判例・学説上、これにはプライバシー権が含まれると解されています。子どもも一人の人間(国民)である以上、当然その保護対象に含まれます。


 さらに、日本も批准している国連の「子どもの権利条約」にも、子どもの私生活や通信に対して、恣意的に干渉されない権利(第16条)が明記されています。

 それでは、親の監護権と子どものプライバシー権は、どこで折り合いがつくのでしょうか。重要なのが、子どもの年齢・発達段階という視点です。

子どもの年齢
GPS利用の妥当性
注意すべきポイント

就学前〜 小学校低学年

必要性が極めて高い

一人で危険を判断する能力が未発達なため、安全確保(監護権)が強く優先されます。

小学校中学年〜 中学生

バランスと配慮が必要

自我や自律性が芽生え、一人になれる空間を求め始めます。過度な監視は心理的成長を妨げるリスクがあります。

高校生

一方的な管理は慎むべき

成熟度がさらに高まる時期です。親権は存続しますが、本人の意思を無視した位置情報の強制は「子の利益に反する」とみなされやすくなります。

 法律上も、未成年者の権利は年齢や成熟度に応じて尊重されるべきと考えられており、単純に「親だから自由に監視できる」という発想には注意が必要です。


 同じGPS利用でも、見守りと監視では法的評価が変わりえます。以下の3つの基準で整理します。

(1) 子どもが知っているかどうか(透明性)

子どもにGPSを持たせていることを本人に告げているかどうかは、重要な要素です。特に判断能力が育ってきた年齢の子どもに対して、「知らせずに追跡する」ことは、単なる安全管理を超えて、親子間の信頼関係にも影響します。法的に直ちに違法とまでは言えませんが、後述するハラスメント的な問題につながるリスクがあります。

(2) 取得した情報の利用目的(目的の正当性)

「無事に学校に着いたか確認する」と「子どもが友達とどこで遊んでいるかを逐一チェックする」では、目的の正当性が異なります。前者は安全確保、後者は行動管理・統制に近く、子どもの自律的な成長を妨げる行為として問題視されうるものです。

(3) データの管理方法(第三者漏えいのリスク)

位置情報はセンシティブな個人情報です。利用しているアプリやサービスが適切にデータを管理しているか確認することも、保護者の責任といえます。


 以下のようなケースは、法的にグレーゾーンまたは問題が生じやすい場面です。

ケース1:離婚後に親権のない親が、子ども経由で元配偶者の居場所を把握しようとする

これはストーカー規制法に抵触する可能性があります。元配偶者への接触禁止命令が出ている場合は、なおさら問題です。

ケース2:高校生の子どもに無断でGPSを仕込み、交際相手の自宅まで特定する

子どものプライバシー侵害に加え、交際相手という第三者の個人情報・位置情報を無断取得することになりえます。

ケース3:子どもが嫌がっているのに、位置情報共有を強制し続ける

民法での、子の利益の観点から問題が生じる可能性があります。また子どもの精神的健康への影響が大きい場合、児童虐待防止法上の「心理的虐待」に該当するか否かが議論の俎上に載る可能性もゼロではありません。


 見守りと監視の境界線は、家庭環境や子どもの成熟度、地域の治安などによって千差万別です。ただし共通する原則は、「子の利益のために、子の成長に応じた形で利用する」という一点に尽きます。

 

 冒頭の「いつまで続けていいのか」という問いへの答えも、この原則から導かれます。法的な親権は18歳まで存在しますが、子どもの成熟度に応じて利用方法を見直し、高校卒業・成人を一つの節目とすることが、親子双方にとって望ましいあり方といえるでしょう。


 もし今後「別居・離婚に伴う親権や監護権の話し合いの中で、GPSの利用が問題になってしまった」「他人のプライバシーを侵害したと抗議を受けて困っている」といった具体的なトラブルが生じた場合には、まずは一度、弁護士へご相談ください。

参考記事: 読売新聞オンライン 「小型端末で居場所把握の「子ども見守りサービス」人気…2年で倍増、背景に連れ去り事件増加」 https://www.yomiuri.co.jp/national/20230711-OYT1T50166/



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