子どものゲーム課金、親は取り戻せるの?
- 家頭 恵

- 8 時間前
- 読了時間: 5分
「気づいたら、クレジットカードの請求が10万円を超えていた」
「子ども本人から打ち明けられて、初めてゲーム課金に気づいた」
このように、小学生や中学生が親のスマートフォンやクレジットカード情報を無断で利用し、オンラインゲームのガチャやアイテム購入に数万〜数十万円を課金してしまうトラブルは、近年増加しています。
国民生活センターにも、未成年者によるゲーム課金に関する相談が数多く寄せられており、「まさか自分の子どもが」と驚く保護者の方は少なくありません。
親に無断で行われた高額課金について、法的に返金を求めることはできるのでしょうか。一定の条件を満たす場合には、「未成年者取消権」という制度を使って返金を求められる可能性があります。
今回は、小中学生の子どもをもつ親御さん向けに、ゲーム課金トラブルの法的な考え方と、実際に取るべき対応を具体的な流れに沿って解説します。
民法では、未成年者*が法律行為(契約などの法的な行為)をするには、原則として法定代理人(親権者)の同意が必要と定めています(第5条)。そして、同意を得ずに行った契約は、後から取り消すことができます。これが「未成年者取消権」です。
ゲームへの課金も、法的にはゲーム会社との間で繰り返し成立する売買契約・役務提供契約です。子どもが親の同意なしに行った課金は、この取消権の対象になりえます。
取り消しの効果は強力で、民法第121条の規定により、契約は最初からなかったことになります。つまり、ゲーム会社側はお金を返還する義務を負います。
*参考:「未成年者」とは何歳まで?
令和4年(2022年)の民法改正により、成年年齢は20歳から18歳に引き下げられました。したがって現在は、18歳未満の者が行った契約に取消権が適用されます。
取消権には、いくつかの重要な例外があります。返金交渉に入る前に、自分のケースが該当しないかを必ず確認してください。
(1)親が「同意・追認」していた場合
課金の事実を知りながら黙認していた、あるいは事後的に「まあいいか」と認めてしまった場合は、追認(民法 第122条)となり、取り消せなくなります。発覚後の言動には注意が必要です。
(2)子どもが年齢を偽っていた場合
サービス利用時に「成年者である」と積極的に偽るなど、だまして契約したと評価される場合には、取消権が制限されることがあります(民法第21条)。ただし、単に年齢確認の画面を読み飛ばしたり、生年月日入力を誤魔化した程度では、一律に詐術と評価されるわけではありません。
(3)親のスマホやカードを勝手に使った場合
これは少し複雑な論点です。親名義のアカウントやクレジットカードが利用されている場合には、契約上の当事者が親と評価される可能性があり、単純な未成年者取消権の問題ではなくなります。この場合、厳密には未成年者取消権ではなく、無断使用という事実関係に基づいた交渉・返金申請の問題として交渉することになります。法的根拠は異なりますが、子どもが親の管理下にある端末に無断でアクセスしたという実態を誠実に説明することで、事実上の返金対応に応じてもらえるケースはあります。
(4)「時効」に注意
取消権には行使期限があります。保護者が課金の事実を知った時点から5年、または行為のときから20年(民法 第126条)です。実務上は、発覚したら速やかに動くことが重要です。
実際にトラブルが起きてしまった場合、どのように行動すればよいのでしょうか。実務的な手順を3つのステップで解説します。
(1)証拠を集める
まず、以下の情報を整理・保存してください。
・クレジットカード明細・キャリア決済の履歴(日時・金額・加盟店名)
・対象ゲームのアカウント情報(ユーザーID、課金履歴)
・子どもの年齢を証明できるもの(健康保険証、住民票など)
証拠はスクリーンショットも含めてデジタル・紙の双方で保存しておくと安心です。
(2)ゲーム会社やプラットフォームのサポート窓口に連絡する
問い合わせの際は「未成年者が保護者の同意なく行った課金であるため、未成年者取消権を行使します」という旨を明確に伝えます。
スマホゲームの多くは、ゲーム会社ではなくAppleやGoogleといったアプリストア(プラットフォーム)を経由して決済されます。そのため実務上は、ゲーム会社への連絡と並行して、各ストアのサポート窓口へ「未成年者の誤操作・無断利用」として返金申請を出すのが、解決への近道になるケースが多いです。
先述の通り、「本当に子どもが操作したのか」を疑われるケースも少なくありません。「親が仕事で不在にしていた時間帯に使用されていた」など、子どもが操作せざるを得なかった状況や証拠を、誠実に粘り強く説明することがポイントになります。
(3)回答を待ち、内容を確認する
会社側からの回答は、数日〜数週間かかることが一般的です。全額返金、一部返金、拒否のいずれかの回答が来ます。一部返金や拒否の場合でも、理由の説明を求め、再交渉の余地を探ることが大切です。
返金を受けられた後も、同じトラブルを繰り返さないための対策が必要です。
設定面での対策として、スマートフォンのペアレンタルコントロール機能(スクリーンタイム〈iOS〉)・Googleファミリーリンク〈Android〉など)を活用して、アプリ課金を制限する、クレジットカードの利用通知を即時受け取る設定にする、といった方法が有効です。
コミュニケーション面での対策として、「課金=本物のお金が出ていく」ことを子どもと一緒に確認する機会を作ることも重要です。ゲームのビジネスモデルを親子で話し合うことは、金銭教育としても意味があります。
子どもが無断で高額課金をしてしまったとき、親御さんのショックは計り知れないものだと思います。しかし法律上、保護者側を守る制度は存在します。
もし自分たちだけでゲーム会社やプラットフォームとの交渉が進まない場合や、返金を拒否されて対応に困った場合は、一人で抱え込まずに消費生活センターや、私たち弁護士までぜひ一度ご相談ください。事案に応じた対応方針について、実務的な観点からサポートいたします。
参考Webページ: ・独立行政法人国民生活センター 「「未成年者の消費者トラブルについての現況調査」調査報告<結果・概要>」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250305_1.html ・独立行政法人国民生活センター 「全国の消費生活センター等」 https://www.kokusen.go.jp/map/




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