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「しつけのつもり」は通用しない—体罰禁止が法律になった日

  • 執筆者の写真: 家頭 恵
    家頭 恵
  • 7月9日
  • 読了時間: 5分


「痛みで覚えさせるのが本当の教育だ」 「昔はみんなそうだった」 「愛情があるからこそ厳しくする」

 そんな言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。

 しかし、令和2年(2020年)の法改正により、この考え方に法律ははっきりと「NO」を示しました。現在では、親が子どもを体罰によってしつけることは認められていません。

 今回は「体罰禁止」の法的な意味について、若い世代の方や、自分の育て方に不安を感じている保護者の方に向けて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

 大きな転換点となったのは、令和2年(2020年)4月に施行された「児童虐待防止法」の改正です。この改正により、「親権者は、児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」ということが法律に明記されました。

 もっとも、当時の民法には「懲戒権」という規定が残っており、これが「必要な範囲なら親は子どもを罰していい」という誤解や、虐待の言い訳を生む温床になっていました。そこで令和4年(2022年)の民法改正では、その「懲戒権」の規定そのものが削除そのものが削除されました。


 こうして「親だから多少は叩いてもいい」という解釈の余地は、制度上ほぼ封じられています。


 それでは、「体罰」とはどこまでを指すのでしょうか。こども家庭庁(令和5年4月に厚生労働省から業務移管)の示すガイドラインには、次のような行為が体罰の例として挙げられています。


・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた

・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた

・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った

・他人のものを取ったので、お尻を叩いた

・宿題をしなかったので、夕ごはんを与えなかった

・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた


 「そこまで体罰とみなされるの?」と驚いた方もいるかもしれません。大切なのは親の意図ではなく、手段です。たとえ「子どもを立派に育てたい」という善意や教育目的があったとしても、手段として暴力や威圧が使われた時点で、それは違法とみなされます。

 子どもへの暴力事件が報道されるとき、「きょうだい喧嘩を仲裁しようとしただけ」「反抗的な態度を取ったので叱っただけ」という声が上がることがあります。


 しかし、ここで重要なのは子ども側の視点です。法律は、行為者の「意図」だけでなく、被害を受けた側への影響を重視します。親が「叱っただけ」と思っていても、子どもが「怖かった」「痛かった」「傷ついた」と感じていれば、それは法的評価の重要な要素になります。


 また「虐待」は身体的な暴力だけを指すわけではありません。児童虐待防止法は、心理的虐待(著しく拒絶的な対応、言葉による脅し、子どもの目の前でのDVなど)も虐待として明確に位置づけています。


 怒鳴る、無視する、「お前なんか産まなければよかった」といった言葉も、心理的虐待にあたる可能性があります。「暴力」という言葉から私たちが思い浮かべるイメージよりも、法律が保護しようとしている範囲はずっと広いのです。


 もしあなた自身が、家庭の中で次のような状況にあるなら、それは法律が保護しようとしている状況かもしれません。

 ・親や家族から叩かれる、蹴られる、物を投げられる

 ・「死ね」「出ていけ」などの言葉を日常的に言われる

 ・自分のことを否定されたり、きょうだいと比べて激しく非難される

 ・ほかの家庭ではこんなことは起きていないと感じている

 「しつけだから我慢しなければ」「親のことだから誰にも言えない」と思う必要はありません。法律はあなたを守るために存在しています。

 「証拠がないと相談できない」「警察に行くほどのことでもない」と感じている方も多いですが、そんなことはありません。まず状況を話すだけで、専門家が一緒に考えてくれます。一人で抱え込まないでください。


【相談できる窓口(子どもが相談したいとき)】

こちらは2026年7月現在の情報です。相談先の参考にしてください。


・法務省

「いじめ などの電話相談窓口【こどもの人権110番】」

<電話・メール・LINE・手紙で相談可能>


・一般社団法人 社会的包摂サポートセンター

「よりそいホットライン」

<電話・FAXで相談可能>


・特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター(認定NPO)

「チャイルドライン」

<電話・チャットで相談可能>


・子ども家庭庁

「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」

<電話のみ(24時間対応)>


 「怒鳴ってしまった」「手が出てしまった」「あれは体罰だったのかもしれない」


 そう感じている保護者の方も、ぜひ読んでください。


 自分の行動を振り返ることができるということは、子どもと誠実に向き合おうとしている証でもあります。ただ、問題が深刻になる前に、専門家に話しておくことが大切です。法律違反かどうか以前に、「親子関係を修復したい」「育て方を変えたい」という気持ちがあるなら、それを支援する窓口が各地に存在しています。


【相談できる窓口(保護者が相談したいとき)】

こちらは2026年7月現在の情報です。相談先の参考にしてください。


・お住まいの市区町村の相談窓口

・弁護士への法律相談

・内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター」(DVが絡む場合)

 「家庭のことは家庭の中で」という意識は、日本社会に根強くあります。しかし、法律の視点から見れば、家族の間であっても暴力は暴力です。「しつけのつもり」という言葉は、加害者側の言い訳としてはもはや機能しません。


 それと同時に、保護者自身が追い詰められ、助けを求める場所を知らないまま状況が悪化するケースも後を絶ちません。


 子どもが自分を守れる社会と、保護者が孤立せずに子育てを続けられる社会


 その両方を実現するためにも、法律の知識と相談できる窓口を知っておくことは、すべての人にとって意味があります。


 「もしかしたら、相談すべきことかもしれない」と感じたら、どうか一人で抱え込まないでください。弁護士をはじめとする専門家は、あなたの話を聞くために存在しています。


参考Webページ: ・子ども家庭庁「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」 https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/taibatsu/



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