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執筆者の写真家頭 恵

タイムカードが無い…残業代請求はできる?


1 労働時間認定の原則

 労働時間の算定はタイムカード、ICレコーダー等、職場にいることの客観的証拠に基づき行われます。日本の裁判所において、上記の客観的証拠が存在する場合、労働時間はほぼそのとおりに認定されると考えてよいです。


2 タイムカードがない場合の労働時間の認定

 それでは、タイムカードやICレコーダーなどで客観的に労働時間が明らかにならない場合、どういう立証方法があるでしょうか。一般論としては、以下の書類が挙げられており、当事務所では、いずれの場合も労働時間の立証資料とした実績があります。

 

 ① 日報 (運転手や営業担当者等が当日の仕事内容を記録した書類など)

 手書きであっても、それが勤務先や取引先に提出されている場合には証明力は高いです。勤務先がそれらの資料を確認している以上、労働時間の管理をこの日報等で行っていると考えられます。


 ② 業務用パソコンのログイン/ログアウト記録

 必ずしもパソコンでログインしているから職場にいると推認できるものではないですが、ほかに資料が無い場合には、重要な立証の材料になります。

 ③ Suica、PASMO( 交通系ICカード)などの入退出記録

 通勤に使用するものであれば客観的証拠といえます。退社後に寄り道をしている可能性もあるので100%の証明力はありませんが、同じくらい遅い時間に乗車していれば、労働時間をある程度推定できるものとなります。


 ④ 警備記録

(1)自動警備

 セコム等、店舗に自動警備のシステムを導入している場合、警備のセットと解除の時間が記録されています。最終退社のみしか記録されないものの、店長など最後まで残っている人の場合には信頼性があります。

(2)受付がある場合

 大型ショッピングモール等で警備員がいる場合があります。そういった場合、退出者をメモしている記録が存在するので、その記載内容によっては退出時間を特定できます。


 ⑤ 業務用メールやFAXの送信時間等

 近時はクラウドメールやE-FAXがあるので、比較的信用性が低くなっていますが、少なくともその送信している日および前後の時間に業務しているという根拠になります。


 ⑥ シフト表など出勤している人のわかる文書

 手書きであっても、立証可能です。

 ⑦ 店舗の営業時間がある場合は、その営業時間の終期。

 特に1人で閉店作業をしている場合には、閉店作業の平均所要時間が労働時間として認定されることが多いです。特に飲食店等では、閉店作業に時間がかかる傾向があります。

 ⑧ 日記・メモ

 業務内容を記載したメモ等については、手書きのものであっても証拠になります。また、私的な日記も証拠となります。ただし私的な日記を証拠とする場合には、労働時間「のみ」を記載したメモ書きの証明力は否定される傾向にあります。一般的には、立証すべき事項のみを記載した日記は証明力が低く、無関係な私的事情も記載された日記やメモの方が証拠として認められやすいようです。 


3 まとめ

 法律上、労働時間の立証責任は労働者にあります。しかし、労働時間把握義務は使用者にあるため、裁判所としては証明力の低い証拠でも、労働時間をなるべく労働者寄りに認定する傾向があります。全く証拠が無い場合はともかく、少しでも手がかりがあれば労働時間は認定されることがあります。労働者としては労働時間が管理されていなくても、あきらめる必要はありません。上記のリスクを踏まえると、使用者側もきちんとした労働時間の管理が求められているのです。


 一人で悩まず、まずは弁護士への相談から始めてみましょう。当事務所へお任せください。




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